とお悩みの方向けにこの記事を書きました。
この記事では、認知行動療法の具体的な技法を「認知」「行動」「感情」「身体反応」の4つのアプローチに分けて紹介します。
参考になれば幸いです。
【認知行動療法の基本技法】概要や対象を簡単に解説!
認知行動療法は、私たちの思考(認知)、行動、感情、そして身体反応が相互に影響し合うことを理解し、それぞれにアプローチすることで心の健康を改善する心理療法です。
主に認知と行動にアプローチし、思考のゆがみやネガティブな行動パターンを修正し、現実的で建設的な思考や行動を促すことを目指します。
それでは、ここから「認知」「行動」「感情」「身体反応」にアプローチする技法にはどんなものがあるのかを簡単にご紹介します。
認知にアプローチする技法
認知再構成法
概要:
認知再構成法は、現実にそぐわない、非合理的な思考(認知のゆがみ)を特定し、それを現実的で前向きな考えに修正する技法です。
この技法は、感情や行動に影響を与える非現実的な思考パターンを改善することで、ストレスや不安を軽減する効果があります。
使う場面:
ネガティブな思考が習慣化しており、自己評価が低い、将来への不安が強い、他人の評価を気にしすぎるといった状況に適しています。
特に、うつ病や不安障害などの治療でよく用いられます。
具体例:
例えば、「私は何をやっても失敗する」という思考が強い場合、まずその考えがどれだけ事実に基づいているかを確認します。
そして、「全てが失敗しているわけではなく、成功していることもある」という事実に基づく新たな考え方を導入します。
【詳しくはこちら】
ソクラテス式問答法
概要:
ソクラテス式問答法は、クライアントに対して一連の質問を通じて、彼ら自身の思考や信念を深く探求し、非合理的な信念や誤解に気づかせる技法です。
質問形式で進行するため、自己探求を促進し、自己認識を高めます。
使う場面:
物事を過度に一般化したり、極端にネガティブに解釈する思考パターンが見られる場合に有効です。
不安障害や低い自己評価に苦しんでいる人に対してよく使われます。
具体例:
例えば、クライアントが「誰も私のことを好いていない」と信じている場合、セラピストが「全ての人が本当にあなたを嫌っていると考えていますか?」や「最近、誰かがあなたを助けたり、親切にした経験はありますか?」といった質問を投げかけます。
このような問いかけを通じて、クライアントは自分の思い込みが必ずしも事実に基づいていないことに気づくことができます。
【詳しくはこちら】
仙台心理カウンセリング「ソクラテス問答法|認知行動療法|コーチング技法を学ぶ」
行動にアプローチする技法
行動活性化
概要:
行動活性化は、気分の低下や無気力感に悩む人に対して、意図的に楽しい活動や意味のある活動を増やすことで気分を改善する技法です。
この技法は、抑うつ状態などで活動レベルが低下した人が、自発的に行動を起こせるよう支援します。
使う場面:
うつ病や長期的な無気力感に悩む人に効果的です。
また、日常生活が単調で楽しみを感じられないときにも使用されます。
具体例:
例えば、うつ状態で毎日が退屈に感じる人に、好きな音楽を聴く、友人に会う、散歩に行くなどの小さな目標を設定し、それを実行することで徐々に気分が改善されることを体験させます。
これにより、活動と気分の相互関係を理解させます。
【詳しくはこちら】
暴露療法(エクスポージャー)
概要:
暴露療法は、不安や恐怖を引き起こす状況や対象に段階的に直面させ、徐々にその感情に慣れさせる技法です。
これにより、回避行動を減少させ、不安や恐怖を和らげます。特に、恐怖症や強迫性障害の治療に効果があります。
使う場面:
特定の物や状況に対して強い恐怖や不安を感じ、それを避けるための行動が生活に支障をきたしている場合に使います。
具体例:
例えば、高所恐怖症の人がまず低い場所から少しずつ高い場所へと段階的に行く練習をし、その都度不安を感じる中でも安全であることを体験することで、徐々に恐怖を克服します。
【詳しくはこちら】
行動実験
概要:
行動実験は、クライアントが持つ否定的な信念や予測を実際の行動で検証し、その信念が正しいかどうかを体験を通じて確認する技法です。
これにより、非合理的な信念が現実に基づいていないことをクライアント自身が気づくことを目的とします。
使う場面:
特定の思い込みが行動や生活に大きな影響を与えている場合に使います。
例えば、失敗を極端に恐れている人や、他人の評価に過度に敏感な人に有効です。
具体例:
例えば、「プレゼンで失敗すると同僚全員が自分を嫌う」と信じている人が、意図的に小さなミスをして、その後の同僚の反応を観察します。
結果として、ほとんどの人がミスに気づかず、または気にしていないことを実感し、自分の思い込みが誤りであることに気づくことができます。
【詳しくはこちら】
感情にアプローチする技法
イメージ再生法
概要:
イメージ再生法は、過去の辛い出来事やトラウマ的な経験を安全な環境で再体験し、それに対する認知や感情を修正する技法です。
これは、過去のトラウマが現在の感情や行動に影響を与えている場合に効果があります。
使う場面:
トラウマや過去の辛い経験がフラッシュバックなどを引き起こし、日常生活に支障をきたしている場合に使用されます。
具体例:
例えば、交通事故を経験した人が、当時の記憶を詳細に思い出しながら、それに対する恐怖や不安をセラピストと共に見直すことで、その体験が自分の現在に与える影響を減少させます。
【詳しくはこちら】
仁田雄介, 髙橋 徹, 熊野宏昭(2019)恐怖記憶に対するイメージ書き直しと記憶の再固定化の関係 不安症研究,11(1), 2–12, 2019
ストレス免疫訓練法
概要:
ストレス免疫訓練法は、ストレスに対処するための準備とスキルを学び、事前にストレスに対する耐性を高める技法です。
この技法は、リラクゼーション、ポジティブな思考、問題解決法などを組み合わせて行われます。
使う場面:
これからストレスの多い状況に直面することが予想される場合に有効です。
試験や仕事のプレッシャーなどが考えられます。
具体例:
例えば、大きな仕事のプレゼンがある前に、深呼吸やポジティブなセルフトークを練習し、リラックスした状態でその状況に臨むための準備を行います。
【詳しくはこちら】
臨床心理学用語事典「ストレス免疫訓練 (stress inoculation training)」
身体反応にアプローチする技法
リラクゼーション法
概要:
リラクゼーション法は、身体的な緊張を和らげ、ストレスや不安を軽減する技法です。特に、筋弛緩法や呼吸法などが用いられます。
身体のリラクゼーションを促進することで、心も同時にリラックスします。
使う場面:
不安や緊張が身体的に表れている場合(肩こりや頭痛、胃の痛みなど)、またはリラックスすることが難しいと感じているときに使われます。
具体例:
例えば、深呼吸を行うことで心拍数を落ち着かせ、緊張した筋肉をほぐします。
【詳しくはこちら】
まとめ
認知行動療法を学び始めたものの、まだ整理がついていない方に向けて、今回の記事が少しでも役立てば幸いです。
CBTの技法は多岐にわたりますが、それぞれが異なる場面で活用でき、実践を通じて理解が深まるものです。
ぜひ、日々の業務の中で一つ一つの技法を試しながら、少しずつ自分なりの整理と応用を進めてみてください。
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