スクールカウンセラーの守秘義務とは?どのような場合は例外なのか

 

  • スクールカウンセラーの守秘義務とは?
  • 守秘義務には例外があるの?
  • もし秘密を洩らしたら、どんな罪になるの?

について話していきます。

 

スクールカウンセラーになる人には

  1. 臨床心理士
  2. 公認心理師
  3. 精神科医
  4. 児童生徒の心理臨床について高度な専門的な知識・経験を有する大学教授

のいずれかに該当することが原則です。

資格によって多少、守秘義務の内容や罰則が変わってきますが、この記事では公認心理師の場合について解説していきます。

 

スクールカウンセラーの守秘義務とは?

スクールカウンセラーが学校にある相談室でのカウンセリングにおいて、話された内容や知り得た情報は基本的にはクライエント(児童)に断りもなく、他言することは出来ません。

しかし、スクールカウンセラーは学校に属している以上、学校への報告義務もあります。

つまり、スクールカウンセラーはクライエントの秘密を守らなければならないという「守秘義務」と知った情報を報告しなければならないという「報告義務」の板挟みなのです。

どんな場合に秘密を他の関係者たちと共有して良くて、どんな場合は黙っていた方が良いのかは児童の状況や学校の雰囲気などによって異なるので、答えはありません。

新米からベテランまで、スクールカウンセラーは常にこの問題に向き合っていかなければいけないのです。

守秘義務には例外があるの?

法律的に守秘義務を守らなくて良い場合に「児童虐待の通告義務」があります。

この義務は公認心理師だけではなく、すべての国民に課せられた義務です。

「児童虐待の通告義務」とは、児童福祉法第25条(要保護児童発見者の通告義務)の規定に基づき、児童虐待を受けていると思われる児童を発見した場合、通告しなければならないという義務です。

また、公認心理師の守秘義務の例外として以下のような場合があります。

  1. 明確で差し迫った生命の危険があり、攻撃される相手が特定されている場合
  2. 自殺等、自分自身に対して深刻な危害を加えるおそれのある緊急事態
  3. 虐待が疑われる場合
  4. そのクライエントのケア等に直接かかわっている専門家同士で話し合う場合(相談室内のケース・カンファレンス等)
  5. 法による定めがある場合
  6. 医療保険による支払いが行われる場合
  7. クライエントが、自分自身の精神状態や心理的な問題に関連する訴えを裁判等によって提訴した場合
  8. クライエントによる明示的な意思表示がある場合

金沢(2006)を基に作成

児童が自分、もしくは他者を傷つける恐れがある場合、虐待が疑われる場合、児童から「カウンセリングで話した内容を教師などに話しても良い」という意思表示があった場合は守秘義務の例外に当たります。

また、スクールカウンセラーだけで問題を解決することは難しいので、教師や養護教諭など、問題を抱える児童に関係する人たちで情報を共有することが必要になってきます。

ただし、その場合も児童や保護者に「このことは重要なことなので、学校にも伝えておいた方が良いと思うのですが、どうですか?」などと、児童に理解を促したり、明確に誰なら情報を共有して良いのかを確認することが大切です。

教師や養護教諭などと情報を共有する際も、問題解決に必要な部分は情報を共有し、問題解決に必要のない(関係のない)情報はスクールカウンセラーの胸の中だけに留めておきます。

公認心理師の守秘義務違反は医者や弁護士よりも罪が重い

公認心理師が守秘義務を破った場合には、医者や弁護士よりも重い罪が課せられます。

公認心理師法の第四十一条(秘密保持義務)

公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を洩らしてはならない。公認心理師でなくなった後においても、同様とする。

と公認心理師として活動している時はもちろん、公認心理師でなくなった後もカウンセリングで知った情報を正当な理由なしに口外してはならないとしています。

 

もし、この守秘義務を破った場合の罰則規定が、

公認心理師法の第四十六条

第四十一条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

となっています。

 

医者や弁護士が守秘義務を破った場合は、

刑法の第百三十四条

医師、薬剤師、医療品販売業者、助産師、弁護士、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六か月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

となっているので、公認心理師の守秘義務違反は医者や弁護士よりも重いということが分かります。

 

公認心理師の守秘義務違反の罰則が医者や弁護士よりも重い理由として、

  • 法律は後からできた方が重たくなる傾向にあること
  • 心理職は特にクライエントの心の深い部分に関する問題を扱うが、それは「この人になら話しても大丈夫」という信頼の上に成り立っているといこと

が挙げられます。

最後に

そもそも何で秘密を守らないといけないのでしょうか?

人々は他人になかなか打ち明けられないような悩み、問題を心理師に相談します。

それは「心理師は秘密を漏らさない」という絶対的な信頼があるからです。

秘密をほいほい漏らすような心理師には誰も相談したくありません。

もし、正当な理由もなく秘密を漏らすと、秘密を漏らした心理師だけではなく、心理師全体の信頼を失うことになりかねません。

心理師が秘密を大切に扱うということは、人々が心理的支援を受けて、問題が緩和され、より多くの人々が幸せに生きることができるようにするために最低限の条件なのです。

 

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参考文献

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tetsuya
北海道在住の35歳。 元ホテルマン。30歳で一念発起して、大学に入り直し、心理学を学ぶ。医療機関で実務経験を積んだのち、公認心理師を取得。月に10冊以上本を読んだり、論文を読み漁ったりして得た知識をブログでシェアします。