現在、うつ病は年々増加傾向にあり、患者数は100万人以上もいます。
15人に1人は人生のうちで一度はうつ病になると言われています。
知り合いに1人はうつ気味な人がいるような世の中です。
あなたの知り合いにも、うつ気味の人がいませんか?
そんなときにあなたはどうするべきなのか。
あなたの行動次第で最悪の事態を避けられる可能性があります!
というのも、多くのうつ病患者は「自分がそんな深刻な状態ではない」と思い込んでいるからです。
うつ病患者で病院へ行く人は5人中3人と言われています。なので、周りの人の「気づき」が大切になってくるのです。
この記事では、「気づき」が良い感じに働いたケースを紹介し、もしあなたの身近な人がうつ病の疑いがあると思った時、あなたがすべきことを説明します。
「気づき」が良い感じに働いたケース
妻Aは最近、顔色がよくない夫Bのことを心配していた。
夫Bは部署が変わったことで、帰宅時間が以前に比べて遅くなり、帰ってからもため息ばかりつき、食欲もない様子だ。
せっかくの休みの日も無気力にただボーっとテレビを眺めている。
ある日、妻Aがパソコンを使っていると、検索の履歴に「労働者のうつ病や自殺を特集したページ」があった。
それを見た妻Aは地域で行われるうつ病に関するセミナーに参加することにした。セミナー終了後、相談ブースで心理専門職に夫Bのことを相談した。
その心理専門職は「その様子だと夫Bさんはうつ病である可能性があります。出来るだけ早く、病院で受診してください。」と答えた。
そして、心理専門職は「あなたやご家族の方が夫Bさんを心配していることを伝えて欲しい」とアドバイスしました。
家に帰ると、妻Aは夫Bに対して「最近、顔色がよくないし、とても辛そうよ。」と切り出してみた。
すると、夫Bはあまり眠れていないこと、身体がだるいこと、自分が社会に全然役立っていないんじゃないかと考え始めたこと、を妻Aに語った。
黙って話を聞いていた妻Aは「明日病院へ行ってみよう」と言った。翌日、妻Aと一緒に精神科を受診した夫Bは医師から「うつ病」だと診断された。
仕事は休職し、投薬による治療が開始された。
夫Bのメンタルが安定したところで、生活習慣や性格傾向を見直すために、カウンセリングを受けることになった。
カウンセリングを受けていく中で、夫Bは今まで自分がやってきた仕事のやり方が通用しなくなったことで戸惑いをおぼえた、と話し、自分を省みるようになった。
以上はうつ病患者の周りの人の「気づき」から入院・治療につながったケースです。
身近な人がうつ病かも!自分のすべきこととは?
2009年に厚生労働省が「自殺予防のための行動~3つのポイント~」ということで以下の点を挙げています。
〈気づき〉周りの人の悩みに気づき、耳を傾ける
- 家族や仲間の変化に敏感になり、心の悩みを抱えている人が発する周りへのサインになるべく早く気づきましょう。
- 「手を差し伸べ、話を聞くこと」は絶望感を減らすための重要なステップです。時間をかけて、できる限り※傾聴しましょう。
- 話題をそらしたり、訴えや気持ちを否定したり、表面的な励ましをしたりすることが逆効果です。相手の気持ちを尊重し、共感しましょう。
〈つなぎ〉早めに専門家に相談するよう促す
- 心の病気の兆候があれば、本人の置かれている状況や気持ちを理解してくれる家族、友人、上司といったキーパーソンの協力を求めましょう。
- 治療の第一歩は、相談機関、医療機関の専門家への相談から始まります。キーパーソンと連携して、専門家への相談につなげましょう。
〈見守り〉温かく寄り添いながら、じっくり見守る
- 身体や心の健康状態について自然な雰囲気で声をかけて、あせらずに優しく寄り添いながら見守りましょう。
- 自然に応対するとともに、家庭や職場での体や心の負担が減るように配慮しましょう。
- 必要に応じ、家族と連携をとり、主治医に情報を提供しましょう。
傾聴とは
「傾聴」を辞書でひくと、「耳を傾けて熱心に話を聴くこと」とあります。
傾聴はもともと、カウンセリングにおける技法の1つで「相手の気持ちに寄り添い、相手の話にしっかりと耳を傾けることで真意を引き出し、理解すること」を意味します。
「きく」には3種類あります。
・「聞く」(hear)→ 声や音が自然に耳に入ってくること
・「訊く」(ask)→ 自分が知りたいことをたずねる
・「聴く」(listen to)→ 相手がきいて欲しいと思っていることに耳を傾ける
傾聴のテクニック10個
- 相槌をうったり、うなずいたりする→「なるほど。」「そうなんだね。」「うんうん。」
- 自分の言葉に言い換える→「それって、~ってことだよね?」
- 相手の話を要約する→「あなたが言いたいことはつまり~ってこと?」
- 相手の言葉をくり返す→「そっかぁ、最近眠れないんだ?」
- 相手の感情を言葉にする→「それは辛いよね。」「頭の中がモヤモヤしてるんだね」
- 共感する→「そうだね。」
- 話が広がるような質問(*オープンクエスション)を心がける→「それって具体的にどういうこと?」
- 相手が言い終わるまで遮らずに聴く
- 批判しないで聴く→「その通りだね」「自分もそう思うよ」
- アドバイスをしない
傾聴をすることで相手は自分の気持ちが整理され、安心感が得られます。
※質問にはオープンクエスションとクローズドクエスションの2種類があります。
クローズドクエスションは「はい」「いいえ」で答えられる質問です。
一方、オープンクエスションは「はい」「いいえ」で答えられない「いつ?どこで?何が?誰が?どうして?」という5W1Hを基本とした質問です。話を広げるときに有効です。
人は相手の話を聞くよりも、自分が話す方が好きです。
そして、人の話を聞くと、自分の意見を言いたくなったり、アドバイスをしたくなりますが、それが必ずしも相手のためにはならず、かえって症状を悪化させてしまうこともあります。
自分の意見は胸の中にしまっておいて、「しっかりと相手の話に耳を傾けて聴く」ことが大切です。
うつ病患者に「がんばれ」は禁句なの?
「うつ病の人にがんばれは禁句」という話を聞いたことはありませんか?
国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センターの蟹江 絢子医師は次のように話します。
一般的に「がんばれ」と言ってはいけないという風潮が広まっていますが、それは必ずしも正しくありません。
「一緒にがんばっていこう」という意味での「がんばれ」はうつ病患者に対する適切な励ましであり、本人の回復へとつながります。
禁句なのは、無責任な「がんばれ」です。
ただ漠然と「がんばれ」と言われても、本人はどうしてよいのか分からず困惑するだけで、不満がたまってしまいます。
うつ病になると、活動する意欲が低下し、気分が落ち込みます。
そのため、周囲の人からは「あいつはやる気がない」「怠けている」などと誤解されてしまうのです。
そんな人に無責任な「がんばれ」という言葉は、
と、本人に自責の念を与え、うつ症状を悪化させかねません。
うつ病患者に接する際に大切なことは、まず、「辛いよね」「悲しんだね」とうつ病患者の感情に共感し、その後、問題を解決するためにはどうしていくのが良いかを話し合います。
この時に、“一緒にがんばろうね”という意味での「がんばれ」は禁句ではなく、本人の励みになります(Newtone,2020/10)。
自殺を防ぐための4か条「TALK」
「うつ病」と聞くと一番心配なのが、自殺の可能性ではないでしょうか?
うつ病などの精神疾患に罹患すると、自殺のリスクが高まります。
あなたの大切な人を失わないためにも、自殺予防の4か条「TALK」を覚えておきましょう!
- Tell(伝える)・・・「あなたのことをとても心配している。自殺しないで欲しい。」と思っていることを言葉でハッキリと伝える。
- Ask(たずねる)・・・自殺したいという気持ち(自殺念慮、希死念慮)があるかを直接たずねる。
- Listen(聴く)・・・死にたい気持ちや絶望的な気持ちに耳を傾ける。
- Keep safe(安全確保)・・・自殺の危険があると感じたら、絶対に一人にしないこと。また、場合によっては入院などの措置をとること。
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引用文献
Newton(ニュートン)2020/10 -精神の病気の取扱説明書- P32
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