僕は物心がついた時から、「学校で勉強したことや思い出は脳のどこに行くんだろう?」と漠然と疑問に思っていました。
その後、成長して、色々なことを勉強するうちに「記憶はどうやら脳の“海馬”と“側頭葉”という場所にある」ということを知りました。
しかし、その海馬と側頭葉にどのように保管されているのかが分かりませんでした。
などと考えていました。
でも、それは違いました。
もっと脳は驚くべき方法で記憶を脳に保管しており、それがコンピューターにはない人間の「想像力」の鍵だったのです。
この記事は、池谷裕二さんの『記憶力を強くする』を参考に執筆しました。
この本は控えめに言って、めちゃめちゃ面白いです!
この本を読めば、
- そもそも記憶とは何なのか?
- 記憶の種類
- 記憶はどこに保管されているのか?
- 年を重ねると、覚えずらくなるのはなぜなのか?
- 記憶力を鍛えるには
といった、記憶に関することをほぼほぼ網羅することができます。
この手の本は僕のような一般人には理解しがたいことが多いのですが、池谷さんは「一般の方向けに、分かりやすく、説明してくれている」ので、専門家でなくても理解できる内容となってます。
「記憶」に興味がある方は、手に取って損のない本だと断言できます。
神経細胞とグリア細胞
記憶が脳でどのように保管されているか、を説明する前に脳細胞についてお話しなくてはなりません。
脳細胞は神経細胞(ニューロン)とグリア細胞に分けられます。
【神経細胞】
- 役割:情報の伝達と情報処理
- 数:約1000億個
【グリア細胞】
- 役割:血液から神経細胞に栄養を送る架け橋、脳の老廃物などを排除、神経細胞の情報伝達を助ける
- 数:約1兆個
神経細胞は上の写真のように、他の神経細胞とつながっています。(完全にはくっついていなくて若干の隙間がある)1つの神経細胞は約1万個の他の神経細胞とつながっていると言われています。
この神経細胞同士がつながって情報をやり取りする回路が神経回路(ニューラルネットワーク)です。しかも、それぞれの神経細胞は1分間に数百から数万回も連絡を取り合っているというから驚きです。
まさに脳は「小さな宇宙」なのです。
記憶はどうやって脳に保管されてるか?
さて、本題に入ります。
この下の図の〇が神経細胞だとします。そして、神経細胞はこのように他の神経細胞とつながって神経回路を作ります。
脳はこの神経回路を使って情報を管理しています。何かを記憶すると、この神経細胞のつながり方が変化します。
つまり、神経回路の変化こそが記憶の正体なのです。
上の図で説明すると、
[Input 2]-[Hidden 1]-[Hidden 5]-[Output 2]のつながりが「学校の放課後」の記憶
[Input 3]-[Hidden 3]-[Hidden 4]-[Output 1]のつながりが「クリスマス」の記憶
のように、脳は神経回路を使いまわして、色々なことを記憶しているのです。
神経細胞は約1000億個でその1つ1つが約1万ほど、他の神経細胞と連絡しているので、とんでもない記憶容量です。
人間の脳の記憶容量はウィキペディア7個分とも言われています。
この保管方法が「創造力」の鍵だった!
脳が神経回路を使いまわして記憶を保管するのは、もし1つの神経回路に1つの記憶しか保管できなければ、記憶の容量はかなり限られてしまうからです。
しかし、その結果、1つの神経回路には様々な情報が同居して保管されているということになります。同居しているということは、それぞれの記憶は干渉し合ってしまいます。
まさに、これが人間の記憶の曖昧さの原因なのです。
ただ、この記憶の保管方法が人間の「創造力」の鍵でもあります。
情報がお互いに干渉するということは、全く異なる物事を関連付けることができるということです。つまり、僕たちが行っている「連想」という行為そのものです。
例えば、先程の「ネコ」「学校の放課後」「クリスマス」のように神経回路を共有している場合、
と考えていると、ふと、ネコのことが頭に浮かんでくるというのが連想ですね。
さらに、情報を関連付けて、新しいものが形作られるかもしれません。これこそが「創造」という行為です。
脳が神経回路を使いまわすことが、人間の記憶の曖昧さの元凶でもあり、人間の「創造力」の源でもあるのです。
AIが人間を超えられない理由
人間と比べて、コンピューターの記憶の保管方法はずいぶん違います。
コンピューターは記憶する場所が用意されているアドレス方式と呼ばれる方法で記憶します。その場所はたくさんの部屋で、部屋番号(アドレス)が決められています。
ある物事を記憶するとその部屋に保管されます。そして、記憶を呼び出すときは部屋番号を指定して、その記憶を取り出すという能率的な方法となっています。
それぞれの部屋は完全に独立しているので、記憶を保管するときや記憶を取り出すときに間違いは起きません。
つまり、人間のように「あれ~どうだったかなぁ」と記憶が曖昧になったり、勘違いすることもありません。
その点で人間はコンピューターに勝ることは出来ないでしょう。
しかし、人間は神経回路を共有することで、記憶が曖昧にはなってしまいますが、想像したり、思索したり、創造したりすることが出来るのです。
こうした行為は完璧な正確さを誇るコンピューターには到底マネできない芸当です。
AIが人間を超えられない理由はまさにここにあります。
最後に
「脳」ってほんと、不思議ですよね。
重さが1kgちょっとで体重の2%ほどしかないのに、そのちっぽけな物体の中には約1000億個の神経細胞(ニューロン)があり、それぞれが約1万個の他のニューロンとつながって、ニューラルネットワークを形成しているんですもんね。
科学技術の進歩によって、この神秘的な脳の機能の一部が解明されてきました。
「人間はどうやって学習するのか」「記憶とはそもそも何なのか?」
そして、誰もが知りたいであろう「記憶力を上げるにはどうすれば良いか」など。
この本は記憶を理解するのに、本当に役立ちました。
僕らの中にある「小宇宙」を探求しましょう!
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