キャンセルカルチャー(英: cancel culture)とは、過去の不適切な言動などを理由に公的な地位に就く人を辞任(キャンセル)に追いやることです。
キャンセルカルチャーは欧米を中心にしばしば問題になっていますが、日本でも近年問題視されています。
東京2020オリンピックで、組織委員会の会長だった森喜朗氏が女性蔑視と取れる発言をもとに辞任に追い込まれたり、ミュージシャンの小山田圭吾氏が、雑誌のインタビューで同級生に対するいじめを自慢げに語っていたことが批判の対象となり辞任するなど、ですね。
有名人が不倫などでよく取り沙汰されてテレビから追放されたりしますが、SNSでバッシングする人たちは全然関係ないですよね。
では、なぜ人は有名人などの知名度や公的な地位がある人たちをキャンセルするのでしょうか?
その理由を心理学の観点から、分かりやすく解説します。
「キャンセルカルチャー」有名人バッシングの心理
キャンセルカルチャーをする心理には、人間の生物としての本能が関係しています。
人間にとって最も大切なのは、「生存」と「生殖」です。
「生存」は自分に迫る危険を回避したり、除去したりして、生きながらえることですね。
一方、「生殖」はよい良い遺伝子を残せそうなパートナーを見つけて、子孫を繁栄させることです。
人間は社会的な動物なので、集団を形成します。
より良い遺伝子を残せそうなパートナーに気に入られるためには、集団の中でも上位層に入らなければなりません。
しかし、目立ちすぎると上位層から目をつけられて潰されてしまいます。
かといって、潰されることを恐れてヒエラルキーが低いままだと、より良い遺伝子を残すことができません。
では、どうすればいいのか。
その答えがSNSなど匿名でのバッシングや噂話です。
自分のヒエラルキーをひそかに上げる戦略
おおっぴろげに有名人などのヒエラルキーの上位層をバッシングすると、自分が潰されてしまう危険性があります。
そのため、ひそかに自分のヒエラルキーを上げる必要があります。
匿名でのバッシングは、自分が潰される危険を回避しながら、上位層の人を引きずり下ろして、自分の地位を相対的に上げることができるのです。
噂話も同じですね。
私たちは生存と生殖のために、極めて複雑な知略ゲームの真っ只中にいるんです。
正義の名を借りた娯楽
有名人をバッシングする理由がもう一つあります。
人が自身のステイタスを示す方法には、「権力」「成功」「道徳」があります。
しかし、「権力」は誰もが手に入れられるものではないですし、「成功」もたゆまぬ努力や運が必要です。
それに比べて「道徳」は過去に不適切な発言をした人や浮気をした悪者をバッシングすればいいので、誰でも手軽にできます。
悪者をバッシングすることで、自分がその人よりも道徳的なステイタスが上だと示すことができるのです。
言い換えると、有名人バッシングは正義の名を借りた娯楽なのです。
まとめ
- キャンセルカルチャーをする心理には、人間の生物としての本能「生存」と「生殖」が関係している。
- より良い遺伝子を残すためには、自分のヒエラルキーを目立たずに上げる必要があり、そのために匿名のバッシングと噂話が有効。
- 有名人をバッシングすることは手軽にできる娯楽。
【参考文献】
1.「キャンセルカルチャー」有名人バッシングの心理とは?
2.自分のヒエラルキーをひそかに上げる戦略
3.正義の名を借りた娯楽
4.まとめ