- 最近、子どもの様子がいつもと違う気がする
- 学校で何か嫌なことがあるのかも
そう感じている保護者の方は少なくありません。
特にジェンダー多様性を持つ若者は、いじめや社会の空気から大きな影響を受けていることが、UCLA Healthの最新研究で明らかになりました。
この記事では、研究の中身と、私たち大人にできることをわかりやすくお伝えします。
ジェンダー多様な若者を取り巻く現状とは?
ジェンダー多様な若者は、「個人の問題」ではなく「社会環境」によって心が揺さぶられている、ということが今回のUCLA Health研究が示されたことです。
「ジェンダー多様な若者」とは、生まれたときに割り当てられた性別と、自分が感じる性自認(自分の性別だと感じる感覚)が一致しない、もしくはそのどちらの枠にもとらわれない若者のことを指します。
たとえば、男の子として生まれたけれど、自分は女の子だと感じる子、男女どちらでもないと感じる子などです。
これまでも、こうした若者がメンタルヘルスの問題を抱えやすいことは知られてきました。
けれども「それは本人の特性だから仕方ない」と片づけられがちでした。
今回の研究は、この見方を大きく変える内容になっています。
UCLAの研究が明らかにした3つの数字
UCLA Healthの研究チームは、米国全土21カ所、17州にわたる約8,463人の思春期の子どもたち(平均年齢13歳)のデータを分析しました。
さらに、4,200人を5回(2017〜2022年)にわたって追いかけた縦断調査(同じ人を時間をかけて追跡する調査)も実施しています。
主な発見をまとめると次のとおりです。
| 数字 | わかったこと |
| 8,463人 | 分析対象となった思春期の若者の人数 |
| 18% | ジェンダー多様な若者と他の若者の心の症状の差のうち、いじめが説明できる割合 |
| 5回・6年間 | 同じ子どもたちの心の変化を追跡した期間(2017〜2022年) |
特に注目されたのが「精神病様体験(PLEs:Psychotic-Like Experiences)」と呼ばれる症状です。
これは、まわりから見られている気がする、悪口を言われている気がする、誰もいないのに音が聞こえる――といった、本人にとって不安を感じる内側の体験のこと。
重度の精神病ではありませんが、放っておくとうつ病や不安症、自傷行為などにつながるリスクがあると指摘されています。
研究では、ジェンダー多様な若者ほど、このPLEsを経験する割合が明確に高いことが示されました。
なぜ社会環境が子どもの心に影響するの?
社会環境が子どもの心に影響する理由は、繰り返されるいじめや「自分を否定するような空気」が、心に「常に警戒し続ける状態」を作り出すからです。
研究チームは、いじめが「ジェンダー多様性」と「精神病様体験」をつなぐ媒介因子(橋渡し役)になっていると指摘しています。
差の18%がいじめで説明できるということは、「ジェンダー多様であること」自体が問題なのではなく、「ジェンダー多様な子に対していじめが起きる環境」こそが問題だということです。
さらに興味深いのは、ジェンダー・アイデンティティを支持しない州法が継続的に存在する州では、PLEsの増加がより目立ったという発見です。
法律という「目に見える社会の空気」が、子どもの心を内側からむしばんでいる可能性が示されたのです。
たとえるなら、毎日「あなたは間違っている」と言われ続ける環境にいると、誰でも「自分は他人からどう見られているんだろう」と過度に気にするようになります。
これが続くと、警戒するのがデフォルトの状態になり、PLEsのような症状の土台になっていくのです。
親や周囲の大人にできる4つの寄り添い方
研究結果を踏まえると、私たちにできることはたくさんあります。
次の4つのステップで考えてみましょう。
- まず話を聞く姿勢をつくる:「どうしたの?」と問い詰めるよりも「ちゃんとあなたの話を聞きたい」と伝えること。アドバイスより共感を優先しましょう。
- 学校や担任と連携する:いじめの兆候があれば、子どもの了解を得たうえで学校に相談を。担任やスクールカウンセラーと情報を共有することが、環境改善の第一歩です。
- 専門家とつながる:児童精神科医や臨床心理士、思春期外来など、早めに相談できる窓口を知っておくと安心です。
- 「あなたのままでいい」と伝える:日常の小さな会話の中で、お子さんの存在を肯定する言葉を意識的に届けましょう。「家にいるとき、あなたはあなたのままでいい」という空気が、何よりの支えになります。
よくある誤解と正しい理解
ジェンダー多様な若者の心の問題について、保護者や周囲の大人がもちやすい誤解がいくつかあります。
誤解①「思春期の一時的なもの」
一時的な気分の揺らぎとは別物で、放置すると深刻化することがあります。
誤解②「家庭の対応次第ですべて変わる」
家庭の支えはとても大切ですが、学校や社会の環境も同じくらい重要です。
家庭だけで抱え込まないことが大切。
誤解③「ジェンダー多様な子は心が弱い」
違います。
研究は「環境がストレスを生んでいる」と明確に示しています。
子どもの心を守るためには、「個人を変えようとする」のではなく「環境を整える」発想が必要です。
まとめ|社会全体で支える、優しい環境を
今回のUCLAの研究は、ジェンダー多様な若者のメンタルヘルスが「個人の特性」ではなく「社会環境」に大きく左右されることを、確かなデータで示しました。
要点をふりかえります。
- ジェンダー多様な若者はいじめ被害と精神病様体験(PLEs)の発生率が高い。
- いじめは両者をつなぐ媒介因子で、その差の18%を説明する。
- 支持的でない州法が続く州では、心の症状がより悪化していた。
- 解決のカギは「個人を変える」ことではなく「環境を整える」こと。
- 家庭・学校・専門家・社会全体での連携が不可欠。
「子どもの「ちょっとした変化」に気づける大人でありたい。」
そう感じていただけたら、まずは身近なお子さんに「今日はどんな日だった?」と声をかけてみることから始めてみませんか。
あなたの一声が、誰かの心を支える大きな力になります。
【出典】
UCLA Health: Bullying and adverse social climate take measurable toll on mental health of gender-diverse youth
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